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2012年05月01日

<5月号>第五回「東海道」編 その1

今月の特選ネタ

(東海道のスタートは、江戸・日本! この連載にとっては縁起のいい名前!) 

春。

七間町の母との別れを経験した皆さんも、ようやくそのショックから立ち直りつつあると思われる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?
出会いと別れの季節が過ぎ、ゴールデンウィーク到来です。

今年のゴールデンウィークは、待ちに待って開通した新東名!を利用して、県内を満喫してみてはいかがでしょう? 
 

新東名は旧東名の渋滞緩和が目的の一つですが、名物や見どころがたくさんつまったサービスエリアが話題ですよね。たしかに、サクラエビのかき揚げは食べたい・・・。ガンダムもいるとかいないとか。
日本の新・大動脈として、話題十分の新東名。これは逆に、サービスエリア目当ての人たちで混むかもしれませんね。

そこで。このタイミングで江戸時代の大動脈に思いをはせようではありませんか。

はい。今回のテーマは・・・

 

東海道五十三次。

 

東海道とは、江戸・日本橋を起点として、京都・三条大橋までつながる道。
江戸時代は、お伊勢参り(伊勢神宮)へ行く人々でにぎわいました。東名は東京-名古屋ですが、東海道はそれよりずっと長い一本の道になりますね。

「東海道五十三次」は、江戸時代の浮世絵師・歌川広重が、その間にある全五十三の宿場町を描いた浮世絵です。

歌川 広重うたがわ ひろしげ、寛政9年(1797年) - 安政5年9月6日(1858年10月12日)は、浮世絵師
本名安藤鉄蔵。江戸の定火消しの安藤家に生まれ家督を継ぎ、その後に浮世絵師となった。
かつては安藤広重あんどう ひろしげ)とも呼ばれたが、安藤は本姓、広重は号であり、両者を組み合わせて呼ぶのは不適切で、
広重自身もそう名乗ったことはない。また、ゴッホやモネなどの画家に影響を与え、世界的に著名な画家である。---Wikipediaより

静岡市には広重を記念した「静岡市東海道広重美術館」(⇒こちら)もあり、実は、静岡県にとって馴染み深い人物なんです。

そして、宿場町というのは、旅人が休む旅籠(はたご、宿泊施設)や料理屋が密集した場所。江戸時代の旅人にとっては、旅する中で出会う宿場町の名物料理や名所に出会うことも、大きな楽しみだったそうですよ。

 

それはさながら、江戸時代のサービスエリア。

 

そんなことを考えるずっと以前・・・。実はある時、東海道五十三次をまとめてみる機会がありました。
五十三連の浮世絵がズラッと並ぶのは壮観です。

そこで、気づいたんです。

 

川が多い。

 

ここまで読んで、熱心な「橋めぐり」ファンの皆さんならピンときましたね。

 

川があれば橋があるということに。
(・・・四月号の文章を思い出してください。・・・嫌でも、少しだけ思い出してあげてください・・・。・・・。)

 

江戸時代は水道やら下水なんてのもないでしょうから、川は唯一の水源!だからこそきっと、水路から小川、大河まで、あらゆる川が生活に密着してたんですね。
ということは、橋も描かれているんではないか?そんな疑問がわいてきました。

 

というわけで、「東海道五十三次に架かる橋」ウォッチスタートです。

 

静岡県は、五十三の宿場のうち二十一もの宿場が集まる地域。
いったい、いくつの橋が見つかるのか・・・!

 

いざ、東海道橋めぐりの旅へ・・・!

 

 

【その1】 三島宿「朝霧」

 
(「朝霧」。早朝から出発する旅人の姿が数多くみられます。あるいは、朝早くに到着したのかも?)

  

東海道が日本橋からスタートして、11番目の宿場町。現在の三島市に位置し、静岡県内では最初の宿場町(ちなみに、ひとつ前は箱根宿)。当時は「三嶋宿」とも表記していました。

この絵は、うすぼんやりとした背景や人影、霧がかった色彩がふわふわした遠近感になって、他の作品とは違った魅力があります。三嶋大社のシルエットが、早朝の静かな世界を象徴してますね・・・。季節は分かりませんが、朝の、シャンとした空気が伝わってくるようです!浮世絵独特の「誇張した構図」「大胆な遠近感の表現」もとてもよく表れていて、大好きな一枚です。

とまあ、浮世絵的に見どころ満載なんですが・・・

 

橋的に見ると、川がありません。

 

「おいおい・・・一つ目からこれかよ・・・企画倒れじゃん・・・」「橋めぐりマジふざけんなよ・・・」とか言わないでください。
気を落としてはいけません。三島宿には橋があるんです。

実は、広重は一般的に広く知られた「東海道五十三次」以外にも、20種類ほどの「東海道もの」を描いています。

そのうちの一つ「狂歌入り東海道五十三次」というシリーズがありまして、その三島宿には、しっかりと、木の橋が描かれているんです!!
権利の関係でこちらの画像は貼れないのですが、リンクをどうぞ。⇒こちら(三島市公式サイト)

この橋は新町橋という橋で、三島宿への入り口の役割を果たしていたといいます。今は近代的な構造に変わりましたが、現在も大場川に架かっています。⇒こちら(三島市公式サイト)
富士山がきれいに見える、絶景ポイントだそう。

 

早速の三島宿から橋発見とは・・・矛先のいいスタートです(断言)。

 

 

【その2】 沼津宿「黄昏」

 

 (当時の街道の様子がよくわかります。一人旅というのは少なく、数人組が多いですね。
それにしても、細い道・・・)

 

次の宿場は、沼津宿。現在の沼津市大手町周辺にありました。

気になるものがありますね。寄ってみましょう。

・・・

・・・

(気になって仕方ない)

 

旅人が背負っている巨大な天狗 に目が行きがちですが、

 

グッとこらえてください。

 

ツッコミたいその気持ちはよくわかりますが、僕も抑えますから!

 

天狗旅人の奥・・・橋があります!!!

 

人文社の「広重の東海道五拾三次旅景色」によれば、この橋、三枚橋というらしい。この橋を越えれば、沼津宿のあった三枚橋町へ入るのだそう。⇒こちら(沼津市公式サイト)
川は「狢川」(むじながわ。むじなとは、たぬきみたいな生き物です)といって、石を三枚並べて作ったから「三枚橋」と命名されました。よく似た名前の「三園橋」近くにあったそうです。

参考:堀晃明「広重の東海道五拾三次旅景色」人文社、1997年

ちなみにちなみに・・・気になって仕方がない天狗を背負った男ですが、香川県にある金毘羅山・金毘羅参りをする人で、当時は天狗を背負う習慣があったそうです。東海道は江戸・京都の大動脈という意味だけではなく、信仰のため日本各地を巡る一般庶民にとっても、とても大事な道だったんですね。

ではでは、次の宿場へ。

 

 

【その3】 原宿「朝之富士」

 

(絶景の富士)

 

現在の沼津市浮島沼周辺にあった宿場町。東海道の中で、もっとも規模の小さい宿場町でもありました。

ここから、

 

宿-吉宿-蒲宿 と、怒涛の「原」攻め開始です。

 

そんな原宿がテーマのこの絵では、「朝之富士」のタイトル通り、美しい朝富士が。
朝ということで、色の種類は抑え気味。そんな中の、青と赤の対比がくっきり美しい! やさしくスッキリとした画面ですね。いいなあ。空と富士山には、ピンク色の朝日。下にある淡い青とピンクで、夜から朝へと変わっていく、何とも言えない一瞬をとらえた写真のような、そんな不思議な雰囲気があります。

静岡県民には欠かせない、

 

宝永山もばっちり

 
です。さすが広重、わかってらっしゃる。

この原宿、周辺は浮島沼と呼ばれる沼地でした。残念ながら、今回探した限り、この浮島沼に江戸時代からある橋を探し出すことはできず・・・。
ですが、沼というだけあって、当然そこには橋があったはず!原宿についてはいつか実見して調査してみたいものです。

ちなみに・・・原宿と次の吉原宿の間には、中間ポイントの宿場がありました。正式な宿場町ほどではありませんでしたが、それなりにサービスを受けられたそうです。

 

それはさながら、江戸時代のパーキングエリア

 

ですね。

 

その名も「柏原宿」。

 

いやはや。宿-柏宿-吉宿-蒲宿 とパワーアップしました。
「原」でお腹いっぱい。柏原宿名物、浮島沼でとれたウナギのかば焼きを食べる前にお腹いっぱい。

 

橋が見つからないので、原宿を発ちましょう。

 

橋ウォッチャーにとって、橋のない宿場は通過点なのです(???)。
 

 

 

今回の「東海道橋めぐり」はいったんここまで。

いやー、東海道五十三次だけでもこれだけ橋が見つかるものですね。
東海道を描いた浮世絵はたくさんありますから、まだ見ぬ橋があるんじゃないか・・・と思います。今後も、不定期に東海道橋めぐりは進めていきますよ!次は吉原宿からスタートです。

といっても、「橋めぐり読んだよ!」という方から続々と橋情報が集まってきていまして・・・。次回は別の企画かもしれませんが!

今号もお読みいただきありがとうございました!!

 

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